「トップトレーダーのトレードを
そっくりそのままマネすれば
私でもカンタンにお金を稼げる!」
素晴らしいアイデアだった。
自動売買でトレードしさえすれば
自分の頭でムズカシイことを考えず
自動的にお金が増えるなんて、
こんなラクなものはない。
私は毎日現金を引き出し、旅行や
欲しかった服、贅沢な食事をすればいい。
「あんただけラクにお金を稼いで
ぜいたくに暮らしているなんて!」
欲望の眼差しを一身に受けられるだろう。
そうなったらきっと気持ちがいいだろう!
私にぬかりはなかった。
事前調査は怠らない。
「自動売買とはいえ、しっかり稼いでいる
トレーダーを探なければな。」
どんなトレードをしているか、きちんと
公開されていなければ話にならない。
しばらく調査したあと、50万円を
ひと月で500万円に増やした
トレーダーを探すことに成功した。
半年間負けなしのトレーダーだ。
プロトレーダーのサインを受け、さっそく
自動売買トレードを始めることにした。
にやけながら口座に資金をぶっ込む。
「資金は100万円入れよう。
1日10万円稼げるかな?」
稼げるプロトレーダーのトレードを
そっくりそのままマネするトレードが
始まった。
私は自動的に売買しているシステムを
1日に1度、画面をチェックするだけ。
寝てる間に現金収入があるなんて!
「1ヶ月後には100万円が200万円
に膨らんでいるだろう」
「スゴ腕トレーダーだから、500万、
1000万にもなるかもしれない。」
「そこまで欲張るのはいけないな。
2~300万円でガマンしておくか。」
そんなことを考えていた。
(ような気がする)
1ヶ月で資金を数倍にも増加させた
トレーダーだったが、なぜか私が
資金を入れたとたんに成績が停滞。
「まぁ、プロでも成績がわるい時期は
あるだろう。ここは様子見だ」
口座残高は90万円。
お金が増えることだけを考えていた。
「まだ待っていれば大丈夫だ」
「そのうちドーンと20万プラス、30万
プラスが出てくるだろう」
怒涛(どとう)の反撃は突如始まった!
1日に5万、10万の動きが出始めたのだ。
だが、利益ではなく損失の額だったが・・・
「これは、どうしたらいいのだろう。
自動売買を止めるべきか?」
しかし、ひと月で50万円を500万円に
させた実績のあるトレーダーを信じたかった。
「彼ならきっとここから反撃してくるはず。
今止めたらこれまでの損がムダになる。
まだ大丈夫だ。」
「それに、自動売買を止めた途端に
稼ぎ出すかもしれない。そうなったら
くやしいから、ここはまだまだ続行だ!」
・・・1ヶ月後、
私の資金が底を着き、やむなく
自動売買を停止させた。
それからしばらくして、自動売買の
会社はなくなっていた。
私は不幸な出来事に遭遇して
しまったのだろうか?
自動売買の会社にダマされて
いたのだろうか?
今となってはどうでもいいことだ。
「相場って、プロトレーダーでも
継続して利益を上げることが
難しい世界なんだな」
「カンタンにお金が湧き出てくる、
夢物語を追いかけるのはやめよう」
真剣に相場と向き合うきっかけに
なった経験だった。
もし、この自動売買で月に数百万
稼ぐことができていたら、私は今
どうなっていただろうか。
多分「もっと大きく稼ごう」と資金の
大半をつぎ込み、そのほとんどを失う
ということを繰り返していただろう。
そして、稼げないまま徐々に資金を
減らしていくか、勝ったり負けたりを
繰り返して、以前と変わらぬ苦しい
生活を続けていただろう。
トレードの知識も技術もない素人が
自動売買でカンタンに稼げるなら、私や
あなたの周りはみんな金持ちのはずだから。
プロトレーダー並の知識と技術が
身についていれば、自動売買も
有効な手段となる。